賃上げ時代でも勝てる!人材確保のカギは「働きやすさ」と「成長」

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大野輝雄

大野輝雄社会保険労務士事務所 代表
株式会社アクションパートナーズ 代表取締役

社会保険労務士
一般社団法人 日本キャッシュフローコーチ協会 認定キャッシュフローコーチ
一般社団法人 採用定着支援協会 認定採用定着士
銀座コーチングスクール(GCS)認定プロフェッショナルコーチ

関西学院大学卒業、2007年に社会保険労務士として独立。大阪市内を中心に人事・労務についてのサポートやセミナー業務を行っている。同株式会社ならびに社労士事務所にて支援した企業は100社以上。大阪商工会議所、神戸商工会議所、堺商工会議所、高槻商工会議所等にてセミナー実績90回以上。

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「今年の賃上げは、うちの会社で本当に大丈夫だろうか?」「大企業と同じように給料を上げないと、社員が辞めてしまうのではないか?」――最近、賃上げに関するニュースが連日報道され、中小企業の経営者の皆様は大きな不安を感じているかもしれません。厚生労働省の調査によると、2025年に平均賃金(月々の給与)を「引き上げた、または引き上げる予定」の企業はなんと91.5%にも上ったそうです。平均の改定額も1万3,601円と、過去に例を見ない水準です。

この「賃上げムード」は、もはや一時的なものではありません。会社の固定費である人件費が増えるのは経営にとって大きなプレッシャーです。しかし、この流れをただの負担と捉えるのではなく、「社員のモチベーションを高め、優秀な人材を獲得するチャンス」と捉え直すことが大切です。この記事では、賃金以外の魅力で人材確保を成功させ、会社を成長させるための3つの戦略をご紹介します。

賃上げの流れはもう止められない!最新データが示すこと

厚生労働省の2025年「賃金引上げ等の実態に関する調査」は、日本の給与水準が大きく変わろうとしている現実を示しています。

企業にとって賃上げが「必須」になった背景

調査結果を見ると、賃金を引き上げた企業の割合は91.5%と、ほとんどの会社が給与を上げていることが分かります。これは、企業が社員の給与改定を避けて通れない状況にあることを意味しています。

背景には、主に二つの大きな要因があります。一つは、食料品やエネルギーなどの物価が上がり、生活費が増えていることです。社員の生活を守るために、給与を上げざるを得ない状況なのです。そしてもう一つは、人手不足の深刻化です。良い人材を確保しようと、企業同士が給与水準で競争している状態です。

中小企業が「賃金以外」で勝負する理由

賃上げの必要性は理解できても、体力勝負で大企業と同じ金額を提示するのは難しいことです。給与の高さだけでは、中小企業が人材確保の競争に勝つことはできません。

しかし、社員が会社を選ぶ基準は「給料の額」だけではありません。「賃金以外」の魅力を磨き、他社にはない「働きやすさ」「成長環境」を提供することで、優秀な人材を惹きつけ、定着させることが十分に可能です。

中小企業が「賃金以外」で人材確保するための3つの戦略

中小企業が人件費の負担を増やしすぎず、社員の満足度を上げるためには、戦略的な人材確保が必要です。ここでは、特に重要な賃金以外の3つの戦略を紹介します。

1. 柔軟な「働きやすさ」を制度として提供する

大企業では難しくても、小回りの利く中小企業だからこそ提供できるのが、「個人の生活に寄り添った働きやすさ」です。

社員の事情に合わせた柔軟な働き方を、単なる「配慮」ではなく、「制度」として整備しましょう。

  • 勤務時間の柔軟化:出勤時間や退勤時間を自分で決められるフレックスタイム制を一部導入するなど、個々の事情に合わせた働き方を認めることは大きな魅力です。
  • 休暇制度の充実:法定の有給休暇とは別に、家族の病気や行事に対応できる「特別休暇」などを設けることで、社員は安心して長く働けます。

働き方を多様にすることで、介護や育児と両立したい優秀な人材を、賃金以外の魅力で引きつけることができます。

2. 「成長への投資」を評価と結びつける

社員は、お金だけでなく、「この会社で働くと成長できる」という価値を感じたときに、長く働きたいと考えます。会社が社員の成長を本気で支援する姿勢を見せることが、重要な人材確保戦略になります。

具体的な「成長への投資」を、評価制度と結びつけて明確に提示しましょう。

  • スキルアップの支援:資格取得の費用を会社が全額負担したり、業務に必要な研修に積極的に参加させたりする仕組みを作りましょう。
  • 明確な評価基準:社長の気分ではなく、誰から見ても公平で分かりやすい評価基準を設け、それが昇進や昇格にどうつながるかを明確にすることで、社員の会社への信頼度を高めます。

3. 社員の「心理的安全性」を確保する

社員が会社に定着し、長く活躍するためには、職場の雰囲気、つまり「心理的安全性」が非常に大切です。

  • 風通しの良い組織作り:上司や同僚に遠慮なく意見や提案ができる雰囲気を作りましょう。社員が失敗を恐れず挑戦できる環境は、会社へのエンゲージメント(愛着心)を高めます。
  • ハラスメント対策の徹底:職場でのいじめや嫌がらせを許さない姿勢を明確にし、相談窓口を設けるなど、安心して働ける環境を整えることが、離職率の低下につながります。

給与が多少低くても、「人間関係が良い」「自分の意見が尊重される」という賃金以外の魅力は、特に若い世代にとって強力な人材確保の武器になります。

まとめ:人材確保は賃金以外の価値で勝負

この記事では、多くの企業が賃上げに踏み切る中で、中小企業が戦略的に賃金以外の魅力で人材確保を成功させるための3つの視点をお伝えしました。

  • 戦略1:柔軟な「働きやすさ」を制度として提供しましょう。
  • 戦略2:「成長への投資」を評価と結びつけて明確に示しましょう。
  • 戦略3:社員の「心理的安全性」を確保し、離職を防ぎましょう。

賃上げは避けられない流れですが、それを会社の成長に繋げられるかどうかは、経営者の皆様の戦略にかかっています。

「自社に合った働き方改革を進めたい」「賃金以外の魅力で人材確保と定着を実現したい」――もし、そのようなお悩みをお持ちでしたら、ぜひ私たちにご相談ください。私たち当事務所では、貴社の業績や社員構成に合わせた、公平で無理のない賃金制度と、社員の定着率を高める人事制度設計をサポートしています。優秀な人材が定着し、会社が長く発展していくための土台作りを、一緒に進めていきましょう。

 

参考資料

報道発表資料:https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/jittai/25/dl/09.pdf

概況:https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/jittai/25/dl/10.pdf

 

 

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