「人手不足は解消しない」
深刻な現実を前に、建設業界の大手・(株)大東建託が大胆な一手に出ました。
2025年09月16日の大東建託のニュースリリースによると、同社は中央アジアのウズベキスタンで大学生の面接を実施し、来春、幹部候補として採用する方針だということです。
ウズベキスタンをはじめ諸国から「高度外国人材(※注)」の採用を拡大し、彼らを将来の幹部候補や現場監督として育成するという戦略で、これは単なる穴埋めのための採用ではありません。
ますます深刻化する人手不足時代において、中小企業が生き残るために学ぶべき「人財戦略」のヒントが詰まっています。
このことは、日本の建設業界の常識を覆す、画期的な取り組みと言えます。
(注1)高度外国人材とは、日本国内や海外で専門的な知識や技術を習得した外国人材を指し、日本の産業にイノベーションをもたらすとともに、日本人との切磋琢磨を通じて日本の労働市場の発展を促すことが期待される存在のこと。学歴、職歴、年収などからポイントを算出し、一定点数に達すると在留資格「高度専門職」を取得できる。
大東建託が示す、外国人材採用の「新しい常識」
彼らの戦略が「新しい常識」である理由は、以下の点に集約されます。
- 採用対象のレベル: 単純労働者ではなく、現地の大学生を「幹部候補」として採用している点。
- キャリア向上への道筋の明確化: 日本人社員と同じ条件で現場監督業務に従事させ、将来的には国家資格(1級建築施工管理技士)の取得や、本社勤務までを視野に入れている点。
- 長期的な育成への投資: 日本語教育を無償で提供するなど、仕事への定着と本人の成長にきちんと責任を表明している点。
ウズベキスタンは人口約3,570万人で、平均年齢が若く、親日国としても知られています。人手不足が深刻な建設業界において、この「優秀な人財」に焦点を当てた戦略は、非常に合理的です。
中小企業が学ぶべき「人財戦略」3つの視点
「大企業だからできるんだ」と片付けるのではなく、この事例から、中小企業が人手不足を乗り越えるために学ぶべき戦略的な視点が3つあります。
【視点1】 採用エリアを「世界」に広げる
国内の採用競争が激化し、かつ出生率の低下でそもそもの全体数が減少する中、採用のターゲットを国内に限定するのは得策ではありません。親日国や勤勉な若者が多い国に目を向け、採用エリアを世界に広げることが、人財確保の絶対条件になりつつあります。
【視点2】「労働力」ではなく「経営人財」として迎える
外国人を単なる「人手」として低賃金で採用してしまうと、定着せず、すぐに離職してしまいます。
大東建託のように、最初から「幹部候補」「現場監督」として採用し、日本人社員と同じ条件(均等待遇)と、昇進・昇給への明確な道筋を示すことこそが、優秀な人材を引きつけ、定着させる鍵となります。
【視点3】 彼らが定着するための環境への投資を惜しまない
日本語教育の無償提供や、国家資格取得の支援は、短期的に見ればコストです。しかし、これにより「この会社は自分の成長に投資してくれる」という信頼感が生まれ、長期的な定着につながります。人財への投資は、企業が成長するための最も重要な投資なのです。
「人手不足」を「人財獲得」のチャンスに変える
大東建託は、業界全体が抱える「人手不足」という課題を、「世界に目を向け優秀な人財を獲得し、会社を強くするチャンス」と捉えています。
あなたの会社でも、目の前の人手不足を解消するために、採用戦略と人事制度を見直してみませんか?
私たちは、外国人材の採用から定着に至るまでの、労働法規上の手続き、日本人社員との均等待遇を実現する賃金・評価制度の設計、外国人社員が着実にステップアップしていく仕組み作りなど、多岐にわたるサポートを提供しています。
グローバルな視点を取り入れた「攻めの人財戦略」で、会社の未来を一緒に切り開きましょう。
参考:大東建託ウェブサイト:高度外国人材採用に向けた取り組み