カスハラ対策の義務化!中小企業が2026年10月までにすべき2つの準備
厚生労働省は、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策を企業に義務化する法改正案を、2026年10月1日に施行する案を示しました。これまでは大企業だけの努力義務でしたが、施行されれば中小企業を含むすべての会社で、カスハラから社員を守るための対策が義務となります。
「カスハラ対策」というと、大掛かりなことを想像するかもしれませんが、そうではありません。今回の指針案では、暴言や土下座の強要だけでなく、SNSへの悪評投稿や無断撮影などもカスハラの例として挙げられています。この変化に対応するためには、今から会社のルールや体制を整えておく必要があります。この記事では、中小企業の経営者の方が、義務化までに準備すべき「2つの具体的な対策」を、分かりやすく解説します。
なぜ今、カスハラ対策の「義務化」が進められるのか
カスハラとは、お客様や取引先からの、度を超えたクレームや迷惑行為のことです。これが社会問題になり、法的な対策が求められるようになった背景には、社員の心身の健康を守るという、会社の重要な役割があります。
1. すべての企業で社員を守る義務
今回の法改正は、中小企業を含むすべての会社に、カスハラから社員を守るための体制づくりを求めています。これは義務化されるため、必ず実施しなければなりません。
- 社員の健康を守る:カスハラは、社員の精神的な健康を大きく損ない、離職や休職の原因になります。会社が毅然とした態度で対策を取ることは、社員の安心感と定着に直結します。
- 企業の責任の明確化:カスハラが起きたにもかかわらず、会社が適切な対策を怠った場合、会社の責任が問われる可能性が高くなります。
2. 「新しいカスハラ」の定義を知る
今回の指針案では、カスハラの範囲が広がっている点に注意が必要です。従来の対面での行為だけでなく、デジタル時代特有のハラスメントも含まれます。
- SNSでの攻撃:インターネット上の匿名での誹謗中傷や、不当な低評価の書き込みなどもカスハラに含まれる場合があります。
- 無断撮影・盗撮:社員の顔を無断で撮影したり、それを拡散したりする行為も、精神的な攻撃としてカスハラに該当します。
中小企業が2026年10月までにすべき「2つの準備」
義務化までに時間がない中で、中小企業がすぐに取り組むべき、費用をかけずにできるカスハラ対策の具体的な「2つの準備」をご紹介します。
1. 相談体制と対応マニュアルの整備
社員が安心してカスハラについて相談でき、会社が迅速に対応するための体制を整えることが最も重要です。
- 相談窓口の設置と周知:カスハラ専用の相談窓口(担当者や外部の専門家など)を設け、全社員にその窓口を繰り返し周知しましょう。相談者のプライバシーを守るルールも明確にすることが大切です。
- 具体的な対応マニュアルの作成:カスハラが発生した場合に、「誰が」「いつ」「どのように」対応するのかを具体的に定めたマニュアルを作りましょう。マニュアルには、「お客様でも、暴言や暴力には毅然と対応する」という会社の姿勢を明確に記載します。
2. 就業規則と懲戒規定の見直し
カスハラ対策は、お客様に対するものだけでなく、社員の側にもルールを設ける必要があります。
- 社員への教育:社員に対して、「カスハラにどのように対応すべきか」「お客様の言動がカスハラに当たる場合の相談先」などを定期的に教育する機会を設けましょう。
- 求職者へのセクハラ対策の明確化:今回の法改正には、就職活動中の学生などへのセクハラ対策の義務化も含まれています。万が一、社員が求職者に対してセクハラを行った場合の懲戒規定を、就業規則で明確にしておくことが必須です。
まとめ:カスハラ対策は社員の定着に繋がる
この記事では、カスハラ対策の義務化の動きを受け、中小企業が2026年10月までに準備すべき「2つの具体的な対策」をお伝えしました。
相談体制と対応マニュアルの整備、そして就業規則の見直しは、社員をカスハラから守り、安心して働ける環境を提供するための重要な対策です。社員が「この会社は自分たちを守ってくれる」と感じることは、人材定着に繋がるのです。
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参考資料
厚生労働省 労働政策審議会雇用環境・均等分科会「改正労働施策総合推進法及び改正男女雇用機会均等法の施行期日及び指針等のあり方について」(2025年11月17日提示)






