総務省から日本の人口推計が発表されました。
2025年10月1日時点の総人口は、前年と比べて約59万人も減っているそうです。
特に生産年齢人口、つまり15歳から64歳までの「働き手」の減少が止まりません。
「うちの会社も人手不足で困っている」
「なかなか若い人が採用できない」と悩んでいる経営者の方も多いのではないでしょうか。
この人口減少は、私たち中小企業の経営に最も大きな影響を与える問題です。特に、働く人の数が減っている中で、これまでと同じ採用方法では立ち行かなくなります。この記事では、この人口減少の現実を踏まえ、人手不足に悩む中小企業が「働く人」を確保し、会社を存続させていくための3つの対策を分かりやすく解説します。
人口減少が中小企業にもたらす3つの現実
統計データを見ると、日本の人口減少のスピードがいかに速いかが分かります。この現実は、中小企業にとって具体的にどのような課題をもたらすのでしょうか。
1. 働き手の減少は「採用難」をさらに加速させる
総人口が減っているだけでなく、15歳から64歳の生産年齢人口も、前年と比べて約19万5千人減少しています。これはつまり、今後、求人を出しても応募者がなかなか来ない「採用難」がさらに厳しくなることを意味しています。
特に中小企業では、大手企業との人材獲得競争が激化しています。これまで採用できていた人材層に頼るだけでは、会社の事業継続が難しくなるでしょう。
2. 「未来の働き手」の減少はより深刻
最も深刻なのが、15歳未満の人口が前年比で約35万4千人と、大幅に減っている点です。これは、今の若い世代が労働力となる10年後、20年後には、現在の数よりもはるかに少ない人数しか働き手がいなくなることを示しています。
この統計は、「今いる社員を大切にし、長く働いてもらう」ための仕組み作りが、どれほど重要であるかを私たちに教えてくれます。
3. シニア人材の活躍の場をどう作るか
統計では、65歳以上の人口も微減していますが、高齢化率は依然として高い水準にあります。これまでの「定年」という枠組みにとらわれず、豊富な経験を持つシニア層をいかに活用し続けるかが、人手不足を乗り越える鍵となります。
「働く意欲があるのに辞めてしまう」という事態を避けるためにも、シニア層が健康的に能力を発揮できる職場環境づくりが急務です。
中小企業が「働く人」を確保するための3つの対策
人口減少という厳しい現実の中で、中小企業が人手不足を解消し、事業を安定させるために、今すぐ取り組むべき3つの対策をご紹介します。
対策1:「定年」を考えず「長く働ける仕組み」に切り替える
優秀な社員に長く働いてもらうことは、新しい人材を採用するよりもはるかにコストを抑えられます。定年の年齢を延長したり、廃止したりすることを真剣に検討しましょう。
- 再雇用制度の柔軟化:定年後も本人の希望や健康状態に合わせて、勤務時間や業務内容を柔軟に変えられる制度を導入しましょう。
- シニア向けの評価制度:年齢で給与が下がるのではなく、経験やノウハウを教える役割など、「シニア層ならではの価値」を評価する仕組みを取り入れましょう。
社員が「この会社で一生働きたい」と思えるような、安心できる環境を作ることが大切です。
対策2:多様な人材を「働きやすい環境」で迎え入れる
これまで採用の対象外としていた人たちにも目を向け、彼らが働きやすい環境を整えることで、人材の層を厚くできます。
- 女性の活躍推進:育児や介護と両立できるよう、柔軟な勤務時間や在宅勤務制度などを導入し、女性が管理職として長く活躍できる土壌を作りましょう。
- 外国人材の受け入れ:技能実習制度や特定技能制度など、外国人材を受け入れるための制度を学び、彼らが安心して働けるよう、日本語学習支援や生活サポートを行いましょう。
多様な人材がそれぞれの能力を発揮できる仕組みこそが、これからの人手不足解消の要となります。
対策3:「時間」ではなく「成果」で評価する制度に変える
働く人が減るということは、一人ひとりの生産性を上げなければならないということです。そのためには、「どれだけ会社にいたか」という時間ではなく、「どれだけの成果を出したか」で評価する仕組みが必要です。
- 評価基準の明確化:誰が見ても納得できる、公平な評価基準を作りましょう。
- 効率化への投資:ITツールやロボットなどを積極的に導入し、社員が本来の仕事に集中できる環境を整備することが、結果的に生産性向上につながります。
会社の成長と社員の頑張りが結びつく制度が、優秀な人材を引きつける磁石となるでしょう。
まとめ:人手不足 中小企業は「人材戦略」が会社の命運を握る
この記事では、日本の人口減少の現実と、人手不足に悩む中小企業が「働く人」を確保するための3つの対策をお伝えしました。
人口が減り続ける時代において、会社の命運を握るのは「人材戦略」です。今いる社員に長く健康に働いてもらうこと、そして、多様な人々を柔軟に受け入れる仕組みづくりが重要です。
「シニアの再雇用制度をどう見直すべきか?」「多様な人材を受け入れるための社内規定を整備したい」――もし、そのようなお悩みをお持ちでしたら、ぜひ私たちにご相談ください。私たち当事務所では、貴社の事業継続を見据えた、人口減少時代に対応できる人事制度設計や就業規則の見直しをサポートしています。一緒に、この厳しい時代を乗り越えるための強い会社を作りましょう。
参考資料
- 総務省統計局「人口推計」(2025年10月20日)
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/pdf/202510.pdf
統計局ホームページ/人口推計(2025年(令和7年)5月確定値、2025年(令和7年)10月概算値) (2025年10月20日公表)各月1日現在の日本の人口について、最新の推計結果を掲載しています。






