採用してもすぐ辞めるを断つ!中小企業が注力すべき人材定着の仕組み

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この記事を書いた人
大野輝雄

大野輝雄社会保険労務士事務所 代表
株式会社アクションパートナーズ 代表取締役

社会保険労務士
一般社団法人 日本キャッシュフローコーチ協会 認定キャッシュフローコーチ
一般社団法人 採用定着支援協会 認定採用定着士
銀座コーチングスクール(GCS)認定プロフェッショナルコーチ

関西学院大学卒業、2007年に社会保険労務士として独立。大阪市内を中心に人事・労務についてのサポートやセミナー業務を行っている。同株式会社ならびに社労士事務所にて支援した企業は100社以上。大阪商工会議所、神戸商工会議所、堺商工会議所、高槻商工会議所等にてセミナー実績90回以上。

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「せっかく採用した新人が、3カ月で辞めてしまった…」。
中小企業の経営者にとって、これは時間もコストもかかる、最も避けたい事態の一つではないでしょうか。特に、人材定着率向上は、経営の最重要課題です。

先日、マイナビが「組織定着に関する研究調査レポート」を発表しました。それによると、人材定着の鍵は「入社3カ月」の過ごし方にあるとのことです。この時期、新人は「リアリティ・ショック」(入社前の理想と現実のギャップ)を受けやすく、これが離職の大きな原因になります。この記事では、この「入社3カ月の壁」を乗り越え、新人を即戦力に育て、会社に長く定着させるためのオンボーディング(組織適応支援)の3つの鉄則を、分かりやすく解説します。

 

「入社3カ月」に新人が辞めてしまう本当の理由

多くの民間調査で、新人の離職が最も多いのは入社直後から3カ月以内であることが分かっています。その背景には、中小企業採用活動における大きな落とし穴、「リアリティ・ショック」が潜んでいます。

 

1. 新人が感じてしまう「リアリティ・ショック」とは?

「リアリティ・ショック」とは、入社前に聞いていた情報や抱いていた期待と、入社後に体験した現実との間に大きなズレが生じ、戸惑いや失望を感じる現象のことです。

例えば、「うちの会社はアットホームですよ」と言われて採用したのに、実際は社員同士の会話がほとんどなく、質問もしづらい雰囲気だった、といったケースがこれにあたります。中小企業の場合、良くも悪くも実態がすぐに伝わりやすいため、ショックが大きくなりがちです。

 

2. ショックを放置すると「自然改善」は期待できない

調査レポートでは、リアリティ・ショックを放置しても、新人が自然に立ち直ることは期待できない、と指摘されています。つまり、会社側が意図的に手を差し伸べ、「入社初期の不安」を解消するための仕組み、すなわちオンボーディングが必要なのです。

オンボーディングとは、新人が早く組織に慣れ、能力を発揮できるよう、業務理解や人間関係構築、組織文化の浸透を支援する一連の施策を指します。中小企業採用コストを回収し、人材定着を成功させるためには、この仕組みづくりが不可欠です。

 

中小企業がすぐ導入できる「オンボーディング」の3つの鉄則

高額な研修は不要です。中小企業だからこそできる、きめ細やかなサポート体制を築き、新人の不安を解消しましょう。

 

鉄則1:採用段階で「ネガティブ情報」も包み隠さず伝える

リアリティ・ショックを予防する最も効果的な方法は、採用前に「ありのままのリアルな職場情報」を伝えることです。これを「リアリスティック・ジョブ・プレビュー」と呼びます。

  • マイナス面も伝える:単に「楽しい職場です」と伝えるだけでなく、「うちは人手が少ないから、入社直後は一人で作業することも多いよ」「古いシステムを使っているから、最初は少し大変かもしれない」といった、仕事の難しい点や大変な点も正直に伝えましょう。
  • ギャップを最小限に:先にネガティブな情報を開示しておくことで、新人は覚悟を持って入社できます。これにより、入社後の「こんなはずじゃなかった」というギャップを最小限に抑え、定着への道筋を作ることができます。

 

鉄則2:業務より「人間関係構築」を最優先にする仕組みを作る

入社3カ月で新人が最も不安を感じるのは、「この会社に居場所があるか」という人間関係です。業務のOJT(職場内訓練)よりも、まず社内に話し相手を作ることを優先しましょう。

  • ランチを「ルール化」する:部署や年齢の異なる先輩社員と、週に一度は一緒にランチをする、といったルールを設けてみましょう。これは業務命令とし、費用は会社が負担するとスムーズです。
  • メンター制度を導入する:業務の指導者とは別に、仕事以外の悩みや不安を聞いてくれる「斜めの関係」の先輩(メンター)を配置します。メンターには、新人と定期的に面談する時間を確保させることが、人材定着を確実にする重要なポイントです。

 

鉄則3:社長や役員が「期待」と「ビジョン」を直接伝える

入社間もない新人は、「自分の仕事に意味があるのか」という問いに対して、明確な答えを求めています。社長や経営層が直接関わる機会を持つことが、新人の会社への帰属意識を高めます。

  • 社長面談の実施:入社1カ月以内など、早い段階で社長や役員が新人と1対1で面談する機会を作りましょう。面談では、「あなたに期待していること」や「会社がこれから目指す未来(ビジョン)」を熱意を持って伝えます。
  • 会社が新人に投資する姿勢:新人を「単なる歯車」ではなく、「未来の幹部候補」として扱い、経営層自らが成長をサポートする姿勢を見せることが、中小企業における採用後の定着を決定づけます。

 

まとめ:中小企業 採用 定着は「仕組みづくり」で実現する

この記事では、民間調査の結果を基に、中小企業採用した人材定着させるための3つの鉄則をお伝えしました。

オンボーディングの成功は、採用コストの削減と生産性の向上に直結します。入社前の「リアルな情報開示」でショックを防ぎ、入社後の「人間関係のサポート」と「経営層からのメッセージ」で帰属意識を高めることが重要です。

「新人のフォロー体制を整えたいが、就業規則や人事制度としてどう組み込めばいいか?」「OJTの仕組みをどう設計すれば、社員の負担にならずに定着率が上がるのか?」といった具体的な仕組みづくりには、専門的な知識が必要です。私たち当事務所は、貴社の状況に合わせた、効果的で社員に優しい定着支援プログラムの設計と運用をサポートしています。採用コストを無駄にしない、長く続く会社づくりを私たちと一緒に目指しましょう。

 

参考資料

マイナビ「人材定着の鍵は「入社3カ月」/民間調査」(2025年10月10日)

 

 

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